日本シエーリング株式会社は、10月22日、神戸医療産業都市構想の中核施設の一つであるバイオメディカル創造センター(BMA) において、同社の新たな研究施設である「日本シエーリングリサーチセンター」を正式にオープンした。正式オープンに先立ち10月20日、文部科学省、神戸市、理化学研究所など、センター設立の関係者および今後共同研究を進めていく関係者を招き、記念式典が催された。折からの台風23号の襲来にもかかわらず、多くの招待客が集まり記念式典は盛会であった。その中で、このたびエルンスト・シエーリング賞を受賞した米国NIH(国立衛生研究所)のロナルド・マッケイ教授が記念講演を行った。テーマは翌日からのワークショップに連なるテーマの総論にふさわしい「再生医療の将来展望について」であった。ワークショップは、隣接する理化学研究所 発生・再生科学総合研究センターとの共催で、「再生医療への期待と挑戦」と銘打たれて22日まで開催され、国内外の専門家により、最新知見の披露と活発な討論が行われた。

ギュンター・ストック
シエーリングAG代表取締役
R&D最高責任者
日本シエーリング株式会社会長
アジア太平洋地区統括
エルンスト・シエーリング研究財団は、医療を通じて社会に貢献したいというグループの精神に基づいて1991年に設立された。財団の活動内容には、奨学金の授与やフォーラムの開催のほか、優秀な研究者を讃えるエルンスト・シエーリング賞の授与などがあり、日本人では1995年に西塚泰美・神戸大学名誉教授(前学長)、2000年に清水孝雄・東京大学教授が受賞している。このたびのマッケイ教授の受賞理由は神経幹細胞分野における先駆的業績を讃えたものであり、パーキンソン病や多発性硬化症などの神経変性疾患だけでなく、糖尿病などの生活習慣病に関しても、同教授の研究成果によって新しい治療法の基礎がもたらされている。「何をもって幹細胞は幹細胞となりえるのか?」がマッケイ教授の科学者としてのキャリアの主題といえる。同教授には財団より賞金50,000ユーロが授与される。


 日本シエーリングはこのたび、同センター長に成体神経幹細胞および骨髄系幹細胞領域研究者として著名な桜田一洋氏を招請した。今後、同センターはシエーリング社の世界的研究体制の一環として、再生医療研究に先導的役割を与えられることになる。 同センターはまず、多発性硬化症(MS)、オンコロジーのグローバルなリサーチ活動の枢要な拠点に位置付けられ、さらに21世紀におけるパラダイムシフト(medicine for “cure”から“regenerative”へ)となる「再生医療」におけるリサーチ活動の要とたらんことをめざす。
 日本シエーリングリサーチセンターは、遺伝子療法および細胞療法の実験に使用可能なP2レベルの実験室を備えている。総床面積1,630m2、2005年末までに40名のリサーチメンバー体制を実現する予定。

ワークショップ“再生医療への期待と挑戦” 
Opening Address
Press Conference

桜田 一洋
日本シエーリング
リサーチセンター長





●10月21日
セッション 1 ─進化と再生─
阿形清和/理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター
 進化過程における再生─プラナリアとヒドラ
西川伸一/理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター
 幹細胞とその可能性

セッション 2 ─胚性・体性幹細胞─
中辻憲夫/京都大学再生医学研究所
 ヒト胚性幹細胞
アラン・トロンソン/モナシ大学発生生物学センター(オーストラリア)
 ヒト胚性幹細胞の発生と分化
谷口英樹/横浜市立大学再生医学研究科
 肝臓と膵臓の幹細胞

セッション 3 ─特化した適用における再生医療 1─
ルビー・ガディアリー/カリフォルニア大学サンフランシスコ校(米国)
皮膚領域の再生木下 茂/京都府立大学視覚機能再生外科学

角膜細胞の再生
ルイス・パラダ/テキサス大学 サウスウエスタン医療センター(米国)
がん組織における幹細胞

●10月22日
セッション 4 ─特化した適用における再生医療 2─
中内啓光/東京大学医科学研究所
 造血
笹井芳樹/理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター
 神経再生
浅原孝之/理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター
 血管内皮前駆細胞
ドリス・テイラー/ミネソタ大学 心臓血管再生センター(米国)
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