巻頭言

Jpn J Radiol Technol 2000; 56(4)
将来構想特別委員会
藤田 透

 昨年 4 月の総会において,「将来構想委員会」を特別委員会として組織することが承認され,いよいよ平成12年度から始動することになります.本学会が創立した昭和17年以来,常に右肩上がりであった会員数も平成 6 年度をピークとしてやや減少傾向にあることや多極化・窮状化する周囲の状況を見つめ直して,21世紀の本学会はいかにあるべきかを検討することにしています.
 これまで何度か同様の検討会議(委員会)が組織され,その都度高次の答申がなされてきました.最初は昭和45年12月(学会誌第26巻第 5 号)の「学会の今後のあり方に関する答申書」(山田勝彦委員長)であり,学会員以外の識者を加えた拡大委員会なども開くことにより,系統立てた詳細な答申がなされています.これは本学会が初めて示した「学会論」とされ,本学会の基本的理念となり現在の学会発展に大きく寄与しています.おもな内容は,(1)学会はその学問分野に関心を持つ人であれば誰でも自由に入会できるopen systemであるべき,(2)技術学会の存在価値を明確にするために学問的専門分野を「診療放射線技術」に絞ることが必要,(3)社会的信頼性を得るために法人組織とすることが急務,(4)地方での学術活動の高揚のために地域は支部ではなくブロック程度に拡大すべきであり,その世話人は学術的な面に絞って運営することが望ましい,(5)学術大会運営の基礎となる登録費は事業に伴った正当な額を徴収することが当然で,会員の利益を考えると医学放射線学会との平行開催が望ましい,(6)研究発表の内容は技術学会のfieldをはみ出していないかをチェックする審査機関が必要,等々となっております.
 第二の答申は,昭和49年11月(学会誌第30巻第 4 号)の「学会に関する問題点とその見解」(理事会)であり,企画委員会や「技術・技術学」に関する小委員会および理事会での審議結果としての見解が示されており,これは懸案であった法人格を得るために「技術学」を定義することを目的としていたことが伺われます.この中で,本学会における学術とは「放射線に関する技術」と「放射線に関する技術学」であり,放射線技術の最善のあり方を追求することを体系化したのが「放射線における技術学」であると定義し,これを受けて昭和50年 3 月に社団法人として認可されております.第三の答申は,昭和58年 8 月(学会誌第39巻第 4 号)の「事業並びに運営に関する将来計画案」(山田勝彦企画委員長)であり,会費直納制の試行,増加する演題申込に対応するために春秋 2 回の学術大会の実施,分科会と専門委員会の効率的編成,等につき論じられています.第四の答申は,平成 6 年 3 月(学会誌第50巻 3 号)の「21世紀を展望した学会の将来構想について」(山下一也委員長)であり,識者を加えた拡大委員会を含めて 3 年間にわたる検討結果が詳細に答申されています.この中では,学会組織を「学術系」,「管理系」,「基礎系」に分け,学術大会や各委員会のあり方等につき提言と展望が示されております.
 さて,今年度から始動する「将来構想特別委員会」は平成15年度中間期での答申を目標とする 3 年事業としております.検討すべき諸項目を長期的展望課題,短期的課題,緊急課題に分け,それぞれ関連する常置委員会と連携を持ちながら検討することにしております.短期的課題としては,(1)役員選出及び任期に関する課題,(2)組織及び機構に関する課題,(3)部会に関する課題,(4)分科会に関する課題,(5)JMCPに関する課題,等につき検討します.また,緊急課題は臨床教授制度と本学会との関連についてで,これに対する具体的な取り組みと対応につき模索することにしています.将来構想特別委員会の担務は長期的展望課題で,本学会を時代が要求する学会へと変貌させることを目的とした将来ビジョンについて,財政的な展望を含めて検討することにしています.前述の各答申内容を踏まえ,また21世紀の学会を新しく創る意気込みでの検討が期待されております.会員の皆様におかれましてはこの議論に加わっていただきまして,特別委員会に積極的にご意見をお寄せいただきますようにお願い申し上げます.
(総務理事)