巻頭言

Jpn J Radiol Technol 2000; 56(9)
第28回秋季学術大会へのお誘い
−物を見る確かな目を持とう−
木下富士美

 20世紀も残り数カ月,日本放射線技術学会58年の歴史を振り返ってみても,春の総会学術大会,秋季学術大会を含め,残念ながら過去一度も千葉県での学術大会の開催はありませんでした.
 この度,本学会今世紀最後の学術大会となる,第28回秋季学術大会を千葉県で開催できますことを心より嬉しく思います.  21世紀を目前にし,千葉県の多くの若い会員のためにも是非一度は全国規模の学術大会開催経験が必要と考え,浅学菲才の身を省みず大会開催をお引き受けした次第であります.3 年前,関東 8 県の支部も広域化により新関東部会となりました.小山関東部会長のもと,第28回秋季学術大会を関東部会の大きな事業の一貫と位置付け準備を進めてまいりました.また,関東の一員であります東京部会からもご協力をいただいております.
 昨今のめざましい先端的医療技術の進歩の反面,頻発する初歩的な医療ミスや事故を考え,開催テーマを『21世紀の放射線技術を考える−進む技術・募る不安・築く信頼−』といたしました.いずれはわれわれ自身も受ける側に回るであろう医療を,今秋季学術大会を機会にもう一度,患者側に立って考えていただこうと思いました.
 特別講演は『いのちを救うとは〜これからの「生と死」を考える〜』のテーマで作家の柳田邦男先生にお願いいたしました.先生の医療現場での綿密な取材と,ご自身の悲しいご経験から,必ずやご示唆に富んだお話がいただけるものと期待しております.先生のこれまでの沢山の作品の中に,事実の見方,事実の時代に事実を見る目,事実の読み方など,ジャーナリスト出身らしい,真実をいかにして見極めるかをまとめられたエッセイがございます.本学会を構成する会員の大多数は診療放射線技師ですが,その仕事は患者の臨床データを放射線という手法を使って,迅速に,そして正確に医師に伝えるのが最大の使命と私は考えます.それらの作業過程において事実を見る目,真実を見極める技術がやはり要求されます.新世紀に向け,人として『物を見る確かな目を持とう』ではありませんか.
 今回,首都圏での開催ということで,例年になく一般研究発表の演題数が222と低調でありました.実行委員会ではその分,各分野ごとにトゥワイライトセミナー 5 題を企画いたしました.特に厚生省の池淵先生には『新法令に対応した放射線管理〜一般撮影室から治療室まで〜』をご講演いただきます.そのほかに放射線治療,核医学,IVR-CT/angio,それに将来的な技術として千葉大学工学部 尾松先生には『蛍光画像診断システム』についてお話をいただきます.どうぞご期待ください.また,時間を有効にご利用いただくために20日,21日の両日のお昼には 5 題のランチョンセミナーを設けました.最終日には本学会学術委員会がこれまで文部省科学研究費補助金事業を受けて開催していた,公開シンポジウム「放射線医療における被ばくと対策」を採り入れ,初めての秋季学術大会との共催事業として,防護分科会等のご協力をいただき,「医療被ばくと環境被ばく」のテーマで公開シンポジウムを企画しました.一般市民の皆様と放射線被ばくの問題を一緒に考えてみる,良い機会だと思います.この公開シンポジウムと柳田先生の特別講演は一般公開といたします.
 さて,袋小路だった房総半島も数年前,東京湾横断道路が開通し,新観光名所『海ほたる』が脚光を浴びています.ディズニーランドも拡充され,より楽しみが増えたとも聞いています.どうぞ御家族連れで学会にご参加いただき,学会終了後は秋の房総半島散策と併せてお楽しみください.21日の夜には会員懇親会も計画しております.決して豪華ではありませんが,実行委員会の工夫により楽しいアトラクションも予定されております.是非ご参加いただきお楽しみいただきたいと存じます.
 今回もご共催いただきました日本ラジオロジー振興協会,ご支援を賜りました日本画像医療システム工業会・日本放射線技術学会関係者の皆様に感謝申し上げます.
(第28回秋季学術大会大会長)