JSRT 巻頭言 | Jpn. J. Radiol. Technol. 2001; 57(2) |
研究発表を論文にまとめよう
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杜下 淳次 |
理事として学会運営に参画するようになりすでに 4 年目となりました.この間に情報関連技術は確実に進歩し,職場や家庭でも避けて通ることができない勢いで普及しています.このような背景のなかで,オフィシャルなJSRTのホームページを開設して 2 年半が経ちました.開設当初はアクセス件数が少ないことが心配でしたが,徐々に各会員からアクセスできる環境が整ってきたことや,内容の充実を図ったことが幸いしたのか,近頃では急速に多くの人に利用されるようになり,この原稿を書いている時点で,アクセス件数は 4 万 5 千件を超えています.このことは,いままで,これに関与してきたJSRTサーバ管理班やホームページ作業班にとっては喜ばしいことです. インターネットは,時間と国境を越えて,迅速に多くの情報交換ができる利点があります.最初のうちは,情報を受け取ることだけで満足していますが,少し慣れてくると,情報を発信することにも醍醐味を感じるようになります.実際,個人のホームページを公開する人が増えていることや,情報の交換を迅速に電子メールで行う人が急増してしていることはその証拠であり,また,自然な行動だと思います.一方,学会活動に目を向けてみると,学会員として情報を受け取ることは,会誌を開いて知識を高めることであり,情報を発信することは,研究発表とその成果を論文として残すことだと思います. 以前から,編集委員会や多くの先輩達によって研究発表の論文化を推進する活動がなされており,徐々に論文数が増加してきました.しかし,それでも,研究発表の数と比べて論文発表の数が少ないのは,非常に気がかりなことです.必ずしも,すべての研究発表が論文として相応しいとは言えませんが,多くの場合は,論文等としてまとめる価値があるように思えます.昔から,発表するだけでなく,論文として活字で残したときにその研究が完結すると言われています.この意味は,研究成果を論文として会誌に掲載することで,初めてみなさんの研究が公開されるという意味ではないでしょうか.つまり,せっかく長い時間をかけてまとめた独創的な研究を発表しても,研究発表の会場では,会員のわずか 1%程度しかその研究内容を知ることができません.しかし,たとえ短くても論文として会誌に掲載されれば,多くの会員だけではなく,会員以外の人の目にも触れるようになるのです.このことは,日本学術会議に登録された学会の会員として,大変重要な意味をもちます. 今春,神戸で開催される第57回総会学術大会から,発表後抄録は廃止されます.この決定は,かなり長期間にわたって議論がなされた結果です.廃止のおもな理由は,発表後抄録では対外的に文献としての価値を持たないことです.つまり,査読制度のない後抄録では信頼性を著しく欠きます.そのような文章を書くことに時間を費やすより,これを機に,皆さんが論文として業績を残されることを願っていることも事実です.私は,いままでに皆さんが書いてこられた発表後抄録に,もう少し詳しいデータを加えたり,考察を充実させれば,論文として投稿できる形になると考えています.論文にまとめることは,確かに,大変な努力が必要です.しかし,例えば,学会発表の準備をするときに,最初から論文として投稿できるようなグラフや表を作成しておけば,論文化のために,再び図表を作り直す労力は減ります.このような意味も含めて,この号では,たくさんの学会発表と論文発表をしてこられた方々とともに「より良い学会発表をするために」という記事を書きました.皆さんの日頃の研究成果を,インパクトのある学会発表とするために,是非,この記事を参考にしてください.そして,その延長として,みなさんの研究成果を論文にまとめることにつながることを願っています. (理事) |