JSRT 巻頭言 Jpn. J. Radiol. Technol. 2001; 57(4)
学会の改革にむけて
川村 義彦 

 第57回総会学術大会は,この 4 月に小寺大会長のもとに開催され,大きな学術成果を上げることができました.小寺大会長はじめ関係各位ならびに会員の皆様には心から御礼を申し上げる次第であります.また総会では引き続き学会長のご承認をいただきましたが,学会の改革という大きな課題もあり,鋭意,努力をし責務を果たしていく所存であります.
 学会の改革については今までにも将来構想委員会が作られて答申が出されておりますが,その答申に基づいて本格的な改革がなされずに終わっている経緯があります.しかし,この度の改革は,学術団体として21世紀においても,より一層機能し,そして社会からも信頼され評価される学術団体として発展し,会員にとっても魅力ある学会となることを目的に,本腰を入れて組織機構改革を進めていこうとするものであり,皆様のご理解とご支援を戴きたいと思います.
 すでに事務局の整備というところから改革に着手しており,新事務所への移転は今総会のご承認のとおり,平成14年度初頭の移転を目途にして進めております.また組織機構の改革では,将来構想特別委員会を発足させ,高い志を持って長期的将来を考え,あえて大胆な体質改善と改革を断行することが必要であるという認識に立って作業を進めております.具体的な内容の提示までには今しばらく時間を要しますが,予定しております平成15年度からスムーズな改革が行えるよう,環境整備ならびに基盤整備を順次に進めております.昨年度の事業計画総括で掲げた重点 8 項目は,改革のための整備と密接に関連しているものであり,今年度も「学会誌のさらなる充実」「分科会・部会の活性化促進」「学会運営におけるIT化の研究」「会員の確保・増大の促進」等をも加え,これらの重点項目の検討を整備の一貫と位置付けて事業を推進してまいります.
 さて,改革を断行するには,まず,制度の壁,そして物質・金銭面の壁,さらに意識の壁を破らなければなりません.改革は今後,数年をかけて進めてまいりますが,実行にあたっては,まず,会員や委員・役員の意識の壁を一度,取り払ってみることが大切なことだと思っております.同時に改革にあたっては特別委員会や理事会に任せたというのではなく,自分たちの手で進めるのだという自覚を是非,持っていただきたいと思います.それは学会組織で最も価値ある資源は会員のやる気であると私は考えており,改革の成功は会員の皆様が一丸となって取り組んでこそ,初めて可能になるものと確信をしているからです.EU統合で学ぶべき教訓がたくさんありますが,「改革の意志あるところに道は開ける,痛みを受ける人自身の手による改革には力がある,明確な目標をたてて実行し目標の先にまた新たな目標を置いてこそ前進をすることが出来る」等は,まさに私どもの学会改革での共有する考え方として大事したいものといえます.
 さらに改革にあたって進むべき方角を示す羅針盤も示さなければなりませんが,その向きは定款はもちろんのこと,学会の設立理念のなかにあり,また学会の使命にこそあると私は考えております.学会の設立理念とは,「放射線科学技術に関する研究・学術活動を通じて対象領域の医学・医療の発展に貢献し,人類の幸福と社会の発展に寄与すること」であり,学会の使命とは「放射線科学技術の進歩・発展と学術基盤の強化と社会発展への貢献であり,医療における放射線専門集団として社会に責任を果たす役割」にあります. ミッション(使命),ビジョン(将来像),そしてアイデンティ(存在理由)をより明確にし,変えるべきものは変え,不変であるべきものをしっかりと見据えて,学術活動の座標軸を今後改めて設定していくことになりますが,「やはり,ここは私たちの基本的な部分なのだ,守るべき学会のポリシーなのだ」というところを失わないようにしたいと考えております.会員の皆様には学術活動に積極的に取り組んで戴くと同時に,改革へのご支援,ご協力を宜しくお願い申し上げます.
(学会長)