JSRT 巻頭言 | Jpn. J. Radiol. Technol. 2001; 57(11) |
ゴールを目指して顧客志向を中心に連携を強化しよう
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小川 清 |
21世紀もはや 1 年が経過しようとしている.閉塞感を打破しようとする気概が多用させたのだろうか,この 1 年「21世紀」という単語のオンパレードであった.そのなかで,何が変わったのか考えてみる必要がある.本学会も社団法人の学会組織として,ここ数年,監督官庁の指導により組織面で急激に変化してきた.多くは理解されるところであるが,今年から理事会の末席に加えさせていただき,出席して初めて,感じられることが多かった.会務運営においても会議資料が山ほどあり理路整然で,生真面目さが感じられる.しかしながら現代社会の複雑さから,本会のみでは解決できない事象が多くなりつつある. サッカーは基本的には攻める人,ゲームを組み立てる人,守る人で構成されている.攻める人や守る人は,原則的には自分の役割やエリアをもっているものの,広いグラウンドではいろいろな場面が展開され,自分はフォワードではないけれど,今攻めるべきと判断したら攻めていく.逆に攻め手が守りに入ることもあり,また現在サッカーではゴールキーパーも攻めることがある.このようにサッカーは自分のポジションを自覚しつつ,あらゆる状況に応じて,攻めるのか,守るのかを判断し行動することを求められる.現代社会は,一対一の野球型から臨機応変な判断が要求されるサッカー型社会になっていると考える. 本会は定款に基づき関連学会団体との連携を深め,ともに行動する協調型路線をすすめてきたが,ゴールを目指して役割分担を相互的に果たしつつ,より一層他団体との連携を強化していかねばならない. 本会の大きな研究テーマである被曝線量について考えてみたい.被曝線量は,医療情報としての画質と線量の相反する両面から検討していかねばならない.線量という数値の一人歩きをさせてはいけないのである.本会は今まで多くの会員によって,被曝線量のデータが蓄積されており,そして,将来にわたってデータを加えていくことが可能である.また本会の構成員は職種に限定されていないので,大きな広い考え方で検討できる.そして多施設との連携により妥当なガイドラインが浮かび上がってくる.この面で部会の存在意義は大きく,それを総括し本会がガイドラインを作ることが本会の社会的使命と考える.一方,その実践は,唯一の職能団体であり,放射線を管理できる立場にいる放射線技師の組織集団の力も借りて展開すべきと思う.実践には強い組織団結力と大きな展開力を持つ技師会の協力を得てすすめるべきと考える. 次に画質について考えてみたい.医療のなかに質の論議が少なく,特に支払い基金制度のなかに品質管理の考え方が考慮されていない.本会は「QCプログラム」の出版時からこの点では積極的であったが,さらに進展させていかねばならない.自動車はどの工場で作られても安全に走るが,病院の製品は一流品もあるが,粗悪品もあり工場によってバラバラである.しかも情報公開されていないため買ってみるまで善し悪しが分からず,値段も同じである.それはアウトカムが問われなかったからだ.少なくとも同じ医療工場内での標準化を早急に実践し,質の水準設定を設け目標値に基づき評価するシステムを明確にしガイドラインを作成しておくべきだ. 21世紀を迎え,新しいパラダイムを求める機運がわき起こっている.会員の満足のために何ができるか.国民のために何ができるか.そのためには関連団体と,どのように連携を実践していくかが今後の課題と考える.(理事) |