JSRT 巻頭言 | Jpn. J. Radiol. Technol. 2002; 58(1) |
創立60周年と放射線技術史
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藤田 透 |
新年明けましておめでとうございます. 会員の皆様には健やかに新年をお迎えになられたこととお喜び申し上げます. 今年,2002年は本学会創立60周年の年にあたります.1942年11月16日に創立されて以来,先達の努力により今日まで順調に発展してきましたことを会員の皆様とともに喜びたいと思います. この記念すべき節目の年を迎えるにあたり,今年は「日本放射線技術史第二巻」を発刊することとなりました.1989年に第一巻が発刊されて以来,実に13年ぶりのこととなります. 学会の歴史を物語る貴重な財産となった「技術史第一巻」が発刊されるまでの経緯を当時の山田勝彦会長の記録から振り返ってみますと,1964年の総会で承認を受け,全国から選出された128名の委員からなる編纂委員会が発足して準備が開始されております.しかし,不幸にして委員長を務められた林 周二先生が他界されたことにより事業は中断,加藤芳郎委員長に引き継がれることになり,計画から25年の歳月を要して発刊されております. 「技術史第一巻」の内容は,第 1 章「人・教育」,第 2 章「X線装置・X線管および附属品」,第 3 章「感光材料等」,第 4 章「撮影技術・造影剤」,第 5 章「管理技術」と続き,年代ごとの緻密な調査に基づいた技術史が刻まれております.第 6 章「口述史」は,細江健三先生,梅谷友吉先生らによるX線とのかかわりについての口述記録であり,第 7 章「技術委員会公開討論会」では1984年までの本会の研究業績の分析がされております.そして第 8 章は「日本放射線技術史」,第 9 章は「技術史年表」として編纂されております. 特に,第 8 章の「日本放射線技術史」では,本学会創立時の経緯が創立準備委員会抄録として詳細に記録されており,創立60周年を迎えた今,たいへん興味深く,感慨深く読むことができます.創立以前,技術者の情報交換や技術の向上を目的とした集団が全国(朝鮮,台湾を含む)に10余団体存在しており,それぞれ機関誌も発行されていました.東京に本部を置く「日本レントゲン協会」(機関誌:蛍光),関西に本部を置く「日本放射線技術学会」(機関誌:臨床放射線)等々がこれにあたります.1940年に「日本医学放射線学会」が創立し,斯界の機運を察知した滝内政治郎先生がそれら団体に呼びかけて創立準備委員会を開催(京都ホテル)し,1942年11月16日付で本学会の創立が実現しております.この会議では,1)学会名を日本放射線技術学会とする,2)日本医学放射線学会長を名誉会長として常任副会長と年度副会長をおく,3)年会費を 6 円として事務所を京都帝大におく,4)会誌は年4回発行する,等々の決定がなされております.翌1943年 3 月に九州帝大にて第 1 回創立総会が400名の参加により開催され,学会名を「日本レントゲン技術員学会」への改称を余儀なくされたことが記述されています.当時,多くは徒弟制度に近い形態で技術者養成が行われるなかで本学会の創立が実現したことは,滝内先生を始めとする先達の相当なご苦労があったことを記述の行間に伺い知ることができ,本学会の発展を支える貴重な歴史を知ることができます. 「日本放射線技術史第二巻」では,初巻以降の1961年から2000年までを中心に編纂し,内容も初巻とは視点を変えて本学会の研究業績のまとめに重点をおきました.川上壽昭前会長の指示による編纂特別委員会を組織しての 3 年事業でしたが,各分科会に強力な支援をお願いして短期間で発刊することができました.第 1 章「放射線技術の変遷」,第 2 章「臨床応用技術」,第 3 章「放射線技術学会の歩み」,第 4 章「歴代会長からのメッセージ」で構成し,今年 4 月には皆様に見ていただけることになっております.ご期待ください.改めて,創立60周年のこの年に発刊できますことをたいへん喜ばしく思っております. さらに,この記念すべき年に学会事務局も移転できることになりました.現在の事務所は1972年以来30年にわたって使用してきましたが,一昨年および昨年の総会承認をいただいて,慎重に候補物件の選定をしてきました.新事務所への移転も 4 月下旬を予定しており,いっそうの会員サービスが果たせるよう努力していきたいと考えます. 今夏には,将来構想特別委員会からの答申も予定されております.21世紀の学会像を目指していっそうの発展をしなければいけません.会員の皆様におかれましては,本年もどうか良い一年でありますことを祈念いたしております. (総務理事) |