JSRT 巻頭言 | Jpn. J. Radiol. Technol. 2002; 58(5) |
最近の動き
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成田 廣幸 |
私は国立大学の附属病院に勤務する診療放射線技師で,60歳の定年まで 5 年を残しています.このところ社会情勢が不況続きで,医療界特に国立大学の附属病院を取り巻く情勢は大変厳しいものがあります.多くの国立大学では他大学との統合が進んでおり,その後には独立行政法人化が控えています.そんな中で国立大学医学部附属病院長会議常置委員会組織のあり方問題小委員会作業部会から[国立大学附属病院のマネジメント改革について−国立大学法人化と医療制度改革に向けて−(素案)]という文書が出ました.その中で「国立大学附属病院は国によって設置された大学附属病院として( 1 )地域の中核病院として専門性を有した質の高い医療の提供.( 2 )将来の医療を担う医療従事者の養成.( 3 )臨床医学の発展を推進し,医療技術の水準の向上に貢献.という三つの使命と役割を国民から付託されていると考える.」とされています. われわれの業務については,診療支援業務と位置付け,「外部委託など関係業務の整理合理化を進め,医療技術職員の人事面での管理と流動性を高めるために,医療技術職員は診療支援部において一括管理する.」という方針が示され,現在の医療技術職員の定数のままで余裕のある部分から足りない部分へ流用するという考え方が示されています.その後段に各中央診療施設ごとに改善の方策について述べられていますが,その中の,放射線関係業務の改善の所に,「一部には,所属する診療放射線技師に,本来の使命である診療支援業務を超えるような活動が見受けられるとの指摘もある.」という一文があり,これの意味するところが何なのか大変話題になりました.日本放射線技術学会の会員であるわれわれはどう対処すべきかと思っていましたが,この素案をもとに 3 月12日に[国立大学附属病院の医療提供機能強化を目指したマネジメント改革について(提言)]として国立大学医学部附属病院長会議常置委員会から正式な提言が発表されました.それによると前述の文章も「従来の診療支援業務の整理・合理化を進める.臨床検査技師,診療放射線技師,臨床工学技士等の医療技術職員の人事面での管理と流動性を高めるために,医療技術職員は診療支援部において一括管理する.」と「外部委託など」の文言は消え,各中央診療施設ごとに改善の方策について述べられた所では「一部には,本来の使命である診療支援業務を超えるような活動が見受けられるとの指摘もある.」となって「所属する診療放射線技師に,」が消えていました.これらの変化が何を意味しているのかは定かではありませんが,いずれにせよ「本来の診療支援業務に専念すべきである.」ということだと思います. 長い引用でしたが,日本放射線技術学会の会員で,研究発表や論文の発表などの活動を行っているほとんどの診療放射線技師は,患者さんとのコミュニケーションに意を尽くしながら,本来の診療支援業務に専念しつつ,その診療支援業務に関しての医療技術の改善,開発等を目的に,時間外や休日等を利用して研究をも行っているのが実情だと思います.確かに昨今の経済情勢から以前のような余裕のあった時代とは文字どおり「時代が変わった」のでしょうが,その間に処して研究も行い,一般社会からも評価される内容にしていかなくてはいけないと痛切に考えさせられました. いつもの巻頭言とはやや毛色の変わった内容になったと思いますが,上記のような動きは単に国立大学附属病院に勤務する診療放射線技師についてのみのことではなく,日本放射線技術学会の会員であるほかのいろいろな職種の方々についても大なり小なり同じようなことがいわれているのではないでしょうか.「時代が変わった」に流されてしまわないようにしっかりとした足どりで,安全で安心な信頼の放射線医療を確立するために一層の学術活動を押し進めていかなければならないものと思っております. (中部部会長) |