JSRT 巻頭言 | Jpn. J. Radiol. Technol. 2003; 59(1) |
学会の一層の飛躍を期待する
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川村 義彦 |
新年,明けましておめでとうございます. 会員の皆様には健やかに新年をお迎えのこととお慶び申し上げます. 昨年は新事務所開きとともに創立60周年記念式典を挙行することができ,一つの区切りの年となりました.今年は心新たにして学会の更なる発展のスタートの年としたいと思います. さて,学会の機構改革への将来構想特別委員会の答申が出されました.2 年間におよぶ検討を集約されてまとめられたもので,大変なご苦労をなさいました関係各位の皆様には心から御礼申し上げます.この答申を理事会で検討し,可能なところから順次に改革に取り込んでいくことと致します. 21世紀に於ける新たな機構創造に必要なことは,やはり,その根底に流れる理想を明確にし,達成すべき状態を明らかにすることが基本に重要なことと考えております. 明治維新も戦後改革も国の理想を改め,未来の姿を明示することで成功したように,学会の機構改革には,学会の将来はどうあるべきかという学会を貫通する理想を明確にし,それを会員の皆様と共有すること,そしてそれを徹底させることが成功につながるものと思っております. 当学会が理想とし,今後,達成すべき状態として挙げられるのは,一つ目に学術研究が世の中から一層高く評価される学会を目指し,二つ目は会員の研究業績が高く評価される学会となるように,三つ目は信頼の放射線医療技術を先導し,しかも医療現場から高く評価されるような学会となるように,そして最後に専門職業人の生涯にわたるキャリアをささえる学会となることなどが挙げられます. 機構改革には,これらの大枠に基づいて長期的なビジョンを構築し,同時にそのビジョンを達成するために中期的には何をすべきかを策定し,そして具体的な取り組みが進められていくことになります.また,このビジョン構築のためには現状分析が必須であり,外部環境や学会組織・制度等の内部環境の諸条件を的確に把握し,そして当学会の組織はどのように機能しているか,不具合や不適切,より効果的なアレンジの可能性など学会内部の諸課題を正しく認識し,事実を正確に受け止めて課題を明らかにしていくことになります. ここで学会の抱えている課題のいくつかを提示してみたいと思います.まず,その一つに学会は学術活動を通じて充分な学術成果を挙げて高い評価を得るというのが本来の姿であることから,アカデミックソサエティとしての一段のレベルアップを図らなければならないという課題があります.同時にアカデミックソサエティとしての基軸構築の課題もあります.学会を横糸とし,これに対する縦糸のしっかりした基軸となる大学・大学院との基本軸の構築こそが大きな課題だということです.そして,これに密接に関連する課題として挙げられるのは,これらの機関の在学生並びに卒業生が当然のこととして当学会に入会し,素晴らしい学術研究成果を上げられるように,受け皿の学会としての環境整備にも取り組まなければならないということになるのです.また私どもの学会は,大学のアカデミックな研究者だけでなく,現場の技術者も参加し,個人の専門性を基盤とした幅の広いネットワーク組織構成になっている点に大きな特徴があります.この特徴を生かして専門職業人の生涯にわたるキャリアを支える継続的な教育活動に取り組むなどが期待されており,課題の一つとして取り組まなければなりません.特に最近の関連学術団体の動きとして,技術者資格や生涯教育も視野に入れながら,技術者教育プログラムの認定制度確立への準備が進められている実態があります.この制度の担い手の主役は学会であり,関連する専門分野の学会がネットワークを形成して推進する構図が考えられます.現実に私どもの学会が大きな力となって推し進めたマンモグラフィ認定技師の実績があるわけで,今後,専門技師制度などへ対応していかなければならない環境にあり,課題といえます.さらに,多くの学会が取り組んでおります科学的な根拠に基づく医療EBM(evidence based medicine)の推進を,放射線技術関連でも進めなければならない状態にあり,信頼の放射線医療の確立に寄与できる機能軸の構築などの課題を挙げることができます.学会運営に当たってはこのように多くの課題を抱えているわけで,改革では積極的に取り組んでいかなければなりません. 年頭にあたり,学会の機構改革への取り組みの本質を見誤らない基本軸とそして座標軸を提示させていただきました.会員の皆様には,機構改革の方向,さらに何を意図し,先に何があるのかをご賢察し,ご理解をいただきたいと思います.現実だけを見つめていても将来の姿の正しい判断はできないわけで,そこには未来をイメージする創造力が重要なポイントとなります.会員の皆様には是非,創造的な判断をお願い致します.そして改革推進にあたっての基本思想は,当然のことではありますが,前向きに取り組む会員の皆様を大事にするというところにおいて取り組んでいくことを明らかにしておきたいと思います.最後になりましたが,この一年,会員の皆様方のご多幸を祈念申し上げますとともに,学会運営に一層のご協力を戴きますようにお願い申し上げます. (学会長) |