JSRT 巻頭言 Jpn. J. Radiol. Technol. 2003; 59(3)
JRC2003大会へのご案内
増田一孝 

 今年の大会は会員の皆様の積極的な学術活動により,技術学会史上最大となる630演題の応募をいただきました.応募いただきました演題区分から見た特徴としましては,まず,MDCTを中心としたCT分野が150題,ついでMRI関連100題であり,鑑別診断のため総合画像診断の核ともいえる両分野の研究が機器の開発とともに,技術的にも重要視されている状況を現すものになっております.
 また演題数を職域別に見ますと,国立大学病院関係:約150題,私立病院関係:約135題,公立,私立大学病院関係:約120題,国,公立病院関係:約100題,準公的病院関係:約50題,メーカ:約50題,学生会員:25題でした.個人的な話で申し訳ありませんが,私の所属します国立大学病院関係では,会員 6 名に対して 1 演題の比率であり,今後実施される独法化後の学術的活性度の指標として利用いただけるものと期待しております.
 当初,実行委員会ではプログラム作成の骨子として,特別講演,招待講演,宿題報告,教育講演,シンポジウムなどは,順序立ててお聞きいただけるように配慮すべきとの考えを持っておりましたが,多くの応募演題数と今年から 3 日間開催といった条件が重なり,計画は脆くも崩れ去り,実際の運用は当にショットガン方式となってしまいました.このため,腰を落ち着けて学びたいとされる会員の皆様には,必ずしも良好な環境とは云えませんが,お聞きいただけるプログラムが増加したことに免じてお許しいただければと考えております.
 さて,既にご案内しておりますようにJRC2003の大会の象徴となりますテーマは,日医放の学会長である小西先生から,「放射線医学の新たな展開」の提案を受けましたので,私の方からは,発展した放射線技術を,さらに生命科学に貢献できる精度の高い技術へと展開するためには,形態情報・機能情報・代謝情報の視点から放射線技術が担うべき責任と方向性を展望することが重要と考え,「生命科学」をキーワードとさせていただきましたので, JRC2003大会テーマは 
「放射線医学の新たな展開」〜生命科学の歩みとともに〜
が決定された次第です.
 また,大会テーマに相応しい技術学会のサブテーマである,生命科学に貢献できる技術とは何であるかを考えた場合,今重要なことは「放射線技術の標準化」以外にありません.科学技術の進歩に伴い発展した多種多様な医療技術を,人類の医療の向上と健康の維持のために役立てるためには,技術者自身が生物学的現象,物理学的現象および画像表示技術の全貌を熟知しておくことが基本条件と考えます.
 例えば技術学会の90%以上を構成する診療放射線技師の職業は,単純X線写真検査の際,医師の詳細な指示により,X線を人体に照射できることのみにより成立しております.しかしながら現在,CR,IVR,CT,MR,核医学,放射線治療の近代医療においてそのことが成立するのは極わずかな分野になっております.日常的な検査の継続のなかで,新たな検査モダリティも単に経験に基づき実施されているとしたら,それは生命科学に対する冒涜と云っても過言ではありません.放射線技術者として新たな分野に取り組むためには,その前に,それを実施するために必要な知識とスキルが何であるのか,すなわち医療に必要な各検査モダリティの放射線技術の基準を明確にして,技術者が事前に課題をクリアーできるシステムが構築される必要があると考えます.
 2003大会は特別講演,招待講演,教育講演では「放射線技術の標準化」について重点的に講演いただき,大会フォーラムにおいては,〜専門技術者の必要性〜について会員の皆様と議論できる場を設けるなど,実行委員会としての主張を入れております.
 また,基礎技術の研修のために分科会・学術委員会の協力をいただきモーニングフレッシャーズ 8 題,ランチョンフレッシャーズ 6 題を企画しました.そして,明日の学会の活性化の原動力として期待をしています学生会員の発表では,優秀発表者への表彰を行う企画としております.  最後になりましたが,来る 4 月11日(金)〜13日(日)に開催します第59回日本放射線技術学会学術大会へ多くの会員の皆様に参加いただくことをお願いしまして,ご案内とさせていただきます.
(第59回日本放射線技術学会総会学術大会大会長)