JSRT 巻頭言 Jpn. J. Radiol. Technol. 2003; 59(4)
明日に向けて
大塚昭義 

 最初に,役員を終えるにあたって一言お礼を申し上げたい.私は,90年代前半から秋季大会長を皮切りに,理事,監事と約10年間にわたって本学会の役員を務めさせていただいた.その間,多くの会員のご支援,ご協力をえて,無事任務を遂行することができたことを心から感謝するとともに,今後とも一会員として協力を惜しまないつもりでいる.学会の役員・委員というのはまさにボランティア以外の何者でもないが,皆さんよく頑張っておられる様子をみるにつけ敬服にたえない.しかし,役員・委員が任務へ対する情熱を維持しつづけるためには,数年間隔で新陳代謝(世代交代)をするのが望ましく,若い人の力と積極性を大いに取り入れてほしいと念願している.
 会員数は90年代半ばから減少傾向にあり(これは他学会全般にみられる現象),当然収入も少しずつ減収となっている.逆に支出の方は,事業の拡大にともなって漸増している.このままいけば,いずれ会費の値上げを検討しなければならなくなるが,これはやはりできるだけ避けたいものである.そのためには,事業のスクラップ・アンド・ビルドに積極的に取りくむ必要性を感じている.従来の慣行を見直し,新しい事業に費用を重点的に配分するなど,理事会で積極的な論議をたたかわせて,方向性を見いだしてほしい.
 昨秋,将来構想特別委員会から「教育制度変革に伴う本学会の将来ビジョン」という答申が出された.答申を取りまとめられた前越委員長はじめ委員各位のご努力に対し,敬意を表したい.本答申の大きな特徴は,タイトルにもあるように大学・大学院の設置という教育制度の変革にともなって,本学会のあるべき姿を具体的に示したことである.例えば専門技師(スーパーテクノロジスト)の認定などは,専門医制度と同様に学会のレベルアップを図り,時代へ対応しようという積極的な意図がうかがえる.理事の任期や資格の設定,教育機関や他学会・団体との連携,会員教育の充実など,多くのことが盛り込まれている.答申中の勧告や要請事項を各委員会や理事会で真剣に討議し,結果をいかに実践に生かしていくかが役員に課せられた責務であり,学会の将来像を決定するものとなろう.
 技師教育に大学院が設置されて数年が経過したが,やはりそれにふさわしい人材が育ってきていることは,まことに頼もしいかぎりで喜びにたえない.大学が設置された当初は,大卒者と短大卒者との間で大きな違いがみられず,やや期待はずれのところも散見されたが,近年大卒者の力が着実に伸びているように感じる.これは時間とともに,大学の教育環境が充実してきた結果であろう.さらに大学院が設置されてから当然のことながら,その傾向は顕著になっていることを実感する.こういった新しい有能な人材をいかに確保するかが,学会の将来を決定する重要なカギとなる.そのためには,若い人にとっていかに魅力ある学会とするか,真剣な討議と思い切った方策を立ててほしいものである.
 昨今,社会全体で生涯学習ということがいわれている.進歩の速い世界に身を置いている会員にとっては,特にその必要性を感じるが,個人では適当な学習の場がない会員も相当数いると推測される.学会は今までも会員に対する教育に取りくんではきたが,さらにこれを一歩進めて学習環境を充実させ,生涯教育プログラムを作成するなど一貫した教育システムを構築することが今後の重要課題になると考える.これは,学会全体のレベルアップに役立つであろうし,さらに専門技師を認定(受験)するときに必要となる学識・経験のベースラインを保持するためにも重要となろう.真剣な検討をお願いしておきたい.
 長い間本当にお世話さまになりました.学会の発展を心から願っております.
(前監事,新編集委員長)