JSRT 巻頭言 Jpn. J. Radiol. Technol. 2003; 59(11)
学術交流について
杜下淳次 

 今年度から学術交流委員会を担当しています.ここでは学術交流委員会の活動内容の一部と,会員の海外派遣に対する考えを述べたいと思います.
 学術交流委員会は,国内外を問わず,他学会や関係省庁ならびに関連団体との連携と協調を図ることを担務とし,本学会が関係する広い領域を対象としています.この委員会のなかには,標準化小委員会と関係法令等検討小委員会があり,両小委員会とも,必要に応じて各分科会や専門家の意見を取り入れながら積極的な活動をしています.例えば,標準化小委員会ではJIS原案作成団体としての作業や(原案作成団体として毎年,関係省庁より補助金を受けています),ユーザの立場としてIEC等に関する国内の会議へ継続して参加しており,これについては,“標準化フォーラム”や会誌に掲載している“標準化だより”で活動内容を皆さんに公開しています.一方,関係法令等検討小委員会は,今年度だけでも,文部科学省からの依頼による「国際規制免除レベルの法令への取り入れ」や,厚生労働省からの依頼による「医療法施行規則第24条第 7 号の改正」などに関して,会員ならびに関係する分科会からの意見を広く求め,学会としての意見を取りまとめました.さらに,現在,ICRP2005年勧告の動向について検討中です.また,総会学術大会における“放射線管理フォーラム”の企画も行っています.これらの小委員会で扱う内容は,会員の日常業務に密接しているため重要と考えます.皆さんからのご意見やご要望などがありましたら是非ご連絡ください.
 さて,今年の 1 月号の会誌に,将来構想特別委員会の答申が示されました.このなかで,学術交流委員会に関係して,1)アジア・オセアニア地域を視野に入れた国際交流の推進,2)特別会計のひとつである国際交流基金の増収入策の検討,3)英文誌の再発行の検討,などの要請がなされており,現在,慎重に検討中です.まず,アジア・オセアニア地域との交流ですが,中華医学会影像技術学会との交流を昨年度より再開し,毎年 2 名程度が互いの学術大会に参加して実質的な学術交流を行うことが決まりました(59巻 5 号学術交流委員会報告).今後は,中国との交流を手始めにアジア・オセアニア地域との交流の道を模索し,本学会がこれらの地域で主導的な役割を果たすことを念願し,活動したいと考えています.そのためには,国際的にも活躍できる会員の増加が必要です.
 この委員会の大きな事業のひとつに,海外で開かれる国際研究集会への会員の派遣と,短期留学生の派遣制度があります.国際研究集会への派遣制度は,9 年間に64名の会員が利用しました.一方,短期留学制度は来年度で20年目を迎えますが,これまでに22名の会員をシカゴ大学カートロスマン放射線像研究所に受け入れていただいています.この他にも 6 名の会員が海外の著名な大学での留学を経験しています.このような留学制度を継続するには,会員の皆さんのご理解とご支援が必要であるだけではなく,受け入れ施設の絶大なるご理解とご協力が不可欠であり,深く感謝しております.
 最近入会し,本学会で研究発表を行った複数の若い会員の方から,将来,国際会議で発表することや,短期留学生に選ばれることを目標に頑張っているという話を聞きました.この一例は,国際会議や短期留学生などの派遣制度が,将来,本学会を担う若い会員にとって大変魅力的であるということを示しています.一方では,一部の会員を優遇し過ぎではないか,という懸念の声も聞かれます.しかし,このような会員を学会がサポートする理由は,国際的にも活躍できる優秀な人材を育成し,確保することが学術団体として大変重要であり,さらに,長期的に見れば必ず本学会の進歩に繋がると考えているからです.したがって,積極的に学術研究活動を行っている会員が本学会を本拠地としながらも国際的に活躍できるように,これを支援することは大きな意味を持ちます.すでに国際会議や短期留学への派遣制度を利用したほとんどの方は,その後も継続して精力的に研究発表を行っているうえに,本学会においても座長やシンポジウム等で活躍されています.さらに,それぞれの職場や地方部会においては,積極的にリーダーシップを発揮するなど,周囲の会員にも強い刺激となっています.このことから見ても,これらの制度を継続する必要性と重要性を再認識しています.そして,時代の変化を考慮しながら,より柔軟に対応できる制度として今後も続けて行きたいと思います.会員の皆様には,是非ともこれらの制度の趣旨をご理解いただき,そして,ますます多くの会員が応募されることを期待するとともに(募集記事:59巻 9〜11号),一人でも多くの方がその資金源となる国際交流基金への募金にご協力くださいますようお願い申し上げます.
(学術交流委員長)