JSRT 巻頭言 Jpn. J. Radiol. Technol. 2004; 60(10)
ますますの発展に期待
大野和子 

 最近の本学会の活動を一言で表現するとしたら,「速い,上手い,経済的!」であろう.2 月上旬に起きた,マスコミ各社の,医療被ばくが原因で発がん性が増加する可能性があるという,英国の疫学者の論文に関する報道に対しても,日技放は,大変迅速に,声明文を学会ホームページへ掲載した.この対応が,4 月のJRC総会でのCT被ばくに関する緊急シンポジウム開催へとつながり,学会期間中最大の参加者数の企画となった.また,最近は,医療法,放射線障害防止法などに関連する省庁の意見募集に対して,頻繁に,的確な意見を提案している.当学会は現在,会員総数が 2 万人を超える大きな学術団体であり,日本の放射線診療を技術面から支える大切な役目を担っている.この自負のもとに,今後も継続して意見と協力を行い,放射線診療にとってよりよい制度の法令改正が進むように活動していただきたい.私も微力ながら参加したいと考えており,多くの学会員の協力が不可欠と思っている.これらの対応の背景には,定例の企画運営会議や理事会の適切な対応に加えて,電子メール会議による,担当委員からの迅速かつ正確な情報提供が大きく寄与している.すなわち,このような体制の整備,確立が,今日の的確な活動の源となっている.経済的という点では,理事としてこの 1 年会計内容を拝見するにつけ,多彩な活動のすべてにわたって,大変綿密な会計管理を行っていることに感心している.学会員としては,会費の値下げ要望が強いところであろうが,各種分科会や部会の研究活動,学会からの研究助成金支給,学生会員への援助など,学会の将来を見据えた幅広い活動を実現している背景には,学会事務局や財務担当者が継続した努力を行っていることの賜物であろう.
 さて,このように,体制が整い,経済状態も倹約家のスタッフにより良好な当学会であるが,私からの今後の目標を加えるとすれば,今以上に患者さん,家族から信頼され,敬愛される放射線技術者となるように,学会員を啓発することと,医療現場で孤軍奮闘している診療放射線技師が気軽に参加できる再教育制度の拡充である.この 2 点を合わせて,卒業教育の一環とし,学生会員が卒業と同時に参加できるようなプログラムが完成できればと考えている.開業医も同じだが,たった一人で志を高く持ち続けることは,不可能に近い.精神的にも大きなストレスとなる.当学会が,あるときは母親のように,またあるときは恩師のように,温かく見守り,教育面でのサポートを続けることができれば,精神的にも安定し,高い技術と人格を兼ね備えた,質の高い放射線技術者の拡充につながると考えている.また,このことが,放射線診療技術に対する国民の大きな信頼につながると期待している.(理事)