JSRT 巻頭言 | Jpn. J. Radiol. Technol. 2005; 61(4) |
将来に備えて
−英語論文誌の必要性と意義− |
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大塚昭義 |
本学会誌の編集を担当するようになって 2 年が経過しました.その間私が最も重視してきたのは,投稿論文の審査期間の短縮と早期掲載です.近年当学会は着実な発展を続けており,それは投稿論文数にも表れております.投稿数は年々増加して,昨年は97編と百の大台を目前にするまでに迫ってきました.会誌に対して会員の皆様から寄せられたご厚情に深く感謝する次第です.今後とも気軽に投稿できて読みやすく,親しみの持てる会誌作りを目指して編集委員一同頑張りますので,皆様のご協力をお願いいたします. さて1990年代半ばから,国際学会等において本学会員による研究発表が年々増加しております.これに伴い,編集委員会としては,それらを英語で論文化するための具体的な取り組みの必要性を感じてきました.加えて診療放射線技師教育は多くが大学教育に代わり,大学院の整備も急速に進められて社会人入学者も増大しています.この結果として,学位(博士)を取得するときには,英語で論文を書くことが今後ますます必要になると考えられます.また,学会自体の国際化も必然の時勢であり,海外向けの情報発信手段を持つことは,学会として最優先課題の一つと考えます.これについては,将来構想検討特別委員会の答申にも盛り込まれています(平成14年10月). 以上のような情勢を踏まえ,編集委員会では核となる事業として,近い将来,英語論文誌を発刊することが極めて重要であるとの認識を持っています. 現在,診療放射線技師教育は高度化・専門化する医療に対処するために 4 年制大学教育が急増していますが,その教員は主として本学会,日本医学物理学会(以下,JSMP),日本医学放射線学会,および日本核医学会を活動の場としています(臨床現場の診療放射線技師も含む).そのため,欧米にみられるRadiological TechnologistとMedical Physicist(医学物理士)とを別々に教育するのとは異なり,わが国においては診療放射線技師教育の枠組みのなかでMedical Physics(医学物理学)の教育・研究も展開されています.そうなると,将来的には,本学会もJSMPも会員の主体は保健学科出身者が占めてくると考えられます.それに伴い,両学会の研究領域も次第に交じり合って境界がはっきりしなくなると予想されます.事実,JSMPが主宰する“医学物理士”(http://www.geocities.co.jp/Technopolis/5207/)の認定数222人(2005年 2 月現在)のうち,診療放射線技師籍を持つものは51人(23%)とかなりの数を占めています.今後この割合は,さらに増加していくと考えられます. 本学会とJSMPとは,従来からも「肺のCT検診」や「乳癌検診」の立ち上げ時の調査研究,「診断エネルギー領域における線量測定システム」の確立など,いろいろな面で協力してやってきた経緯があります.このような状況を鑑みて,現在,編集委員会では,JSMPと協同で英語論文誌の発刊を検討しています.本学会とJSMPによる英語論文誌の協同発刊は,放射線技術学と医学物理学の融合を意味し,国際的にも他に類を見ないユニークな学問領域の確立につながると考えられ,ひいては,日本における今後の保健・医療・福祉に大きく寄与すると期待されます. JSMPも,本企画に積極的に取り組んでおります.昨年 5 月には,両学会の委員で構成する英語論文誌発刊合同検討会議が発足し,具体的な方法について両者で十分に協議しております.合同会議の議論を通じて,両学会による協同発刊については,大きな問題点はなく,ほとんどの点で合意できることを確認しています. また,当編集委員会では英語論文誌発刊の試金石とするために,本年12月号(第61巻12号)で英語論文特集を企画しています.この企画については,1 月号(第61巻 1 号)でお知らせしておりますので是非ご覧いただき,奮ってご投稿くださるよう期待しております. 会員の皆様には,英語論文誌の発刊の必要性についてご理解をいただくと同時に,本年12月の英語論文特集号へも多数ご応募くださいますようお願いする次第です.(編集委員長) |