JSRT 巻頭言 | Jpn. J. Radiol. Technol. 2005; 61(5) |
学会の新たな歩みと専門技師認定制度
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平林久枝 |
新春座談会「学会法人化30周年を迎えて」を読んで,学会設立当時から法人化に至る長い道のりを,その時代に即した対応により成果を勝ち取ってきた先人の英知と粘り強い努力に頭が下がる思いである.本学会は社団法人化から30年の活動を通じて組織基盤を整え,民主的学会運営については,関連する学・協会からも評価されるようになった.まだ社会的認知度は低いが,急速に進歩する社会からの要求に応えて医療における放射線医療技術の発展に貢献してきた. 長い歴史のなかで,その節々で「学会のあり方」が答申され,それを道標として学会運営を見直しながら発展してきた.会のレベルを表すものではないが会員数で見ると1975年社団法人認可時の11,300名から1993年には最大の18,154名となった.これはJRC(1988年発足時はJMCP)として共催による総会学術大会の充実とともに,内部の組織構築の課程で専門分科会の果たした役割は大きい.1977年の画像分科会発足から次々と専門分科会が立ち上がり1993年にはほぼ専門分野を網羅する 6 分科会が揃い,2003年には医療情報分科会も発足した.CT装置の急速な開発・普及が高度先進医療の先駆けとなり,IT化に伴う新しい専門技術の習得,研究結果の発表へと会員のニーズの高まりは専門分科会総加入者数の伸び(最近の 6 年間で1.5倍)からもうかがえる.近年の総会学術大会では,熱心な会員が学会場から溢れる状況が続いているが,これは総参加人数だけではなく,研究発表数の増加,教育プログラム,シンポジウムなどの先端技術・情報,実務的専門技術を学ぼうとする会員の姿勢によるところ大である.この傾向がアクティブな会員比率増へつながると期待したい. 本学会は大部分が診療放射線技師,およびその教育機関の教員で構成されているが,今までは身分や資格に関することは職能団体の役割と位置づけて避けて通ってきたように思う.既にマンモグラフィ専門技師,胃がん検診専門技師,超音波検査士について他学・協会による共同認定制度が発足したように,医師万能の時代ではなくなり臨床の実践能力を持つ専門技術者が求められるようになったこと,日本放射線技師会との関係改善が進んだこと等が遅ればせながら本学会の共同認定制度の立ち上げを強く後押しした. 2002年「教育改革に伴う本学会の将来ビジョン」答申のなかで高度医療技術を患者に提供する手段として「スーパーテクノロジスト」(以下ST)認定制度立ち上げを勧告,特別委員会の検討により「ST認定制度に関する検討報告書」となった.「ST制度」の検討中にも社会の動きは速く日本放射線腫瘍学会の放射線治療専門技師認定制度が発足し,医療過誤を契機として本学会の放射線治療専門技師,関連 5 団体による放射線治療品質管理士認定制度が共同認定として急遽動き出した経緯がある. 専門性向上のための認定制度の発足について会員の関心は高く,それは認定のための研修会への参加数にも表れている.質の高い医療技術を社会に効率的に供給できるスペシャリストと位置づけて,専門分野の技術者認定制度確立および充実のため,放射線治療に続いてCT専門技師(胸部),MR専門技師,核医学専門技師についても関連学・協会連携による共同認定の作業が始まっている.関連学・協会の役割と機能を重んじた調整においては放射線技術学を標榜する本学会の果たす役割は大きい. さらに専門性を高め,求められるレベルの各専門技術者を必要人数養成し,ST制度の二階部分構築へと進めるためには,専門分科会にその作業を丸投げすることなく本学会事業の大きな柱の一つと位置づける必要がある. 医療施設については評価機構による認定,専門の学会認定施設の公表等により,患者が病院を評価し,受診を選択できるようになりつつある.医療施設として設備,機器を整えて名医を集めるだけでなく,チーム医療を支える専門の人材を擁していかに安心・安全の高度医療を提供できるかが問われている.そのなかで放射線技術を担う信頼される専門技術者として生き残り,社会に貢献するためには名実ともに技量を備えた認定資格取得が急務であろう. しかしながら,マスコミの事故報道の表面だけを見て,放射線技師の業務役割を理解しない医療関係者が少なくないのも事実で,本質的改善が困難な面もあるが,専門の認定技師が誕生して世間に認知されることが第一歩であり,そのために会員のニーズに応える本学会の体制づくりと会員諸氏の弛まぬ努力が求められる. 会員の質の高い専門技術,研究業績が結果として,職場,社会に正当に評価されることに繋がるだろう.何よりも,安心・安全の医療を提供するために,医療の仲間との相互理解と研鑽により,それぞれの持分に力を発揮して楽しく働きたいものである.(監事) |