JSRT 巻頭言 | Jpn. J. Radiol. Technol. 2001; 57(1) |
新世紀を迎えて
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川村 義彦 |
新年 明けましておめでとうございます. 会員の皆様方には,新世紀の初春を健やかにお迎えのこととお慶び申し上げます. 21世紀の初頭にあたり,会員の皆様には一層の学術研究成果を上げられて医学・医療に貢献し,そして,それが人類の幸福と社会の発展に寄与するように研究開発に努力されますことをお願い申し上げます. さて,21世紀という新世紀を展望すると,やはりテクノロジーの発展とグローバル化はとどまるところを知らないように思われます. テクノロジーの発展では,20世紀末からの情報技術の進歩が,医療工学や医療技術分野の研究に革命をもたらした感があります.開発された医用画像機器をみてもディジタル化の一途をたどり,検査・治療内容も多様化し高度先進医療へと進んでおります.反面,医療データの著しい増大傾向もみられ,画像の診断に関しては,コンピュータの情報処理技術を生かして,支援診断システム構築の研究が加速されてきております.また,ネットワークやデータベースの構築は,EBMやリスク・マネジメントも含めた医療支援や事務支援,そして経営分析などの各種要求に適応しており,今後,一層の情報化の基盤整備が進められようとしております.これらは,まさに情報技術の導入で成り立つもので,これらの分野での技術開発を積極的に進めていただきたいものと考えております. 一方,グローバル化は,ネットワーク医療が本格化し,病診連携,地域医療,遠隔医療,そして世界にも門戸を開くことで加速され,読影においても画像の品質維持でもグローバル化の波にさらされることになります.一施設での画像診断の情報のやりとりではなくなり,しかも一施設でそこそこに評価されて通用していたとしても,どこの医療機関でも評価されて認められ,同時に疾患の実態に迫る的確な情報を提供するのでなければ通用しなくなってくることになります.施設が異なることによる医療情報の質(レベル)の違いがあるとすれば,ネットワーク医療の隘路となってしまい大きな問題となります.したがって,このような問題が起こらないように臨床画像の品質の維持に努めなければなりませんが,むしろ,画像の品質に関しては日本発のグローバルスタンダードを発信し続けるようにしたいものと思っております. この医療情報としての画像の質と被曝線量の,いわば画質制御と線量制御のデータは,今まで多くの会員によって報告されて学会に蓄積されており,現在,これらを元にして作成された乳房撮影ガイドライン・精度管理マニュアルの下に,医療の質の維持とその向上ならびに被曝防護とQC・QAの観点から研修会を行っており,大きな実績を上げております.今後は各種の画像検査を対象に標準撮影ガイドラインの設定とその教育・啓蒙を図っていくことを,関連学会と連携を取りながら進めていかなければならないと考えております. ネットワーク医療構築の進展如何では,臨床現場の放射線技師の業務環境が大きく変わり,画像を取得するだけでなく疾患の実態に迫る情報を作り出す資質が,一層,強く求められることになってきます. 今年の 4 月から診療放射線技師の新たな教育カリキュラムがスタートしますが,それによると専門分野においては撮影・撮像に必要な知識・技術のみでなく,その結果の解析と評価について学習するなど,教育にも大きな変化がみられつつあります. ところで,21世紀を見据えた学会の将来構想特別委員会が動き出しており,抜本的変革をするために,現在の組織を作ってきた前提やパラダイム自体の転換も視野に入れて,学術・組織・運営のすべて分野にわたっての見直し作業が進められております.この検討結果に基づく学会の改革には時間を要しますが,会員にとっても,そして学術団体としても,より魅力ある学会となるように取り組んでまいる所存であります. 最後になりましたが,この一年,会員の皆様方のご多幸を祈念申し上げますとともに,宜しくご協力の程をお願い申し上げます. (学会長) |