JSRT 巻頭言 | Jpn. J. Radiol. Technol. 2003; 59(7) |
若手会員増,学生会員増のために
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倉西 誠 |
平成14年10月31日に将来構想特別委員会(前越委員長)から「教育制度変革に伴う本学会の将来ビジョン」が答申された.この全文は本誌第59巻第 1 号に掲載されたので,会員各位はすでに読まれたと思うが,その末部に「要するに学会はトータルの会員数ではなくて,アクティブな会員数の割合が学会の浮沈を左右するものと思う.」と書かれている.これは正論であり反論できるものではないが,会員の減少傾向は本学会の愁眉の問題とされていることも事実である.また,答申には「若手ワーキンググループの意見を聞き,それを答申に反映させることができた.」と,若手会員の意見が答申のなかで貴重なものであったことを評価している.これらは,本学会の次世代の中核として若手会員が活躍することを期待したものと思われるが,若手会員育成の環境作りは学生会員の時代から始める必要があると考える. 数年来,種々の優遇措置を講じて学生会員の勧誘を図っているが,その入会動向を見ると平成13年度末の在籍会員数16,417名に対して学生は221名と1.3%,平成14年度では16,280名に対して276名の1.7%と,学生会員の数は大きくは伸びていない.しかし,平成15年 4 月に開かれた第59回総会学術大会の実行委員会報告を見ると,学生登録者数が昨年の163名に対して363名と2.2倍強となっている.このように,会員登録している学生の数を学術大会参加学生が大きく上回るようになったことは,会員登録をしていない学生にも本学会に対する関心が高まっていることを示していると考えられる.これら潜在的学生会員を掘り起こし,会員登録してもらう方策を立てることは本学会の維持と発展のうえで重要である. この方策の一つとして「関連教育機関教員と本学会役員の情報交換会」を実施している.これは,指導者である教員の方々に本学会の活動を理解してもらい,また教育機関が本学会に望むことを拝聴して学校教育に寄与するとともに,できるだけ多くの学生会員を迎え入れることができる学会活動の一環とすることを目的に企画したものである.最初の会合は,本学会と日本医学放射線学会の秋季大会が合同開催されたのを機に,平成13年11月 8 日に名古屋国際会議場で開いた.そのときは案内した40校中16校から37名の教員の参加を得た.2 回目は,会合に参加いただく教員の便宜を図って全国診療放射線技師教育施設協議会の会期に合わせ,平成14年 6 月 6 日に大阪市で開催し,8 校増の24校から37名の教員が出席された.この 2 回の会議での成果が,学生会員の増加と学術大会に参加する学生の増加につながったと考えている.そこで,今後も情報交換会を継続し,関連教育機関と本学会の連携を強めることが平成14年度将来構想特別委員会答申のテーマである「教育制度変革に伴う本学会の将来ビジョン」を達成するための一つのポイントになると考える. この連携強化には別のポイントもある.それは地方部会での研究発表会で学生会員などに発表の場を提供することである.情報交換会の席で「カリキュラム・スケジュール上,総会学術大会や秋季学術大会での発表を目的とした学生の研究活動は不可能に近く,地方部会の研究発表会に期待している.」との意見が多くの教員から出されている.すでに実行しておられる地方部会が多くあることも承知しているが,この要望を満足できる配慮を他の地方部会の方々にもお願いしたい.また,地方部会研究発表会での学生の発表がより効果的になるように,地方部会役員と地元の関連教育機関の教員との意見交換を密にされることを望みたい.この例として,本学会が直接関与しているものではないが,中国地方でもたれている「瀬戸内 8 大学合同セミナー」が参考になると筆者は考えている. このようにして迎え入れた学生会員の定着を図り,卒業後は正会員に移行してもらえるように配慮することも重要である.そのために最も大切なことは,「魅力ある学会作り」であることに異論はないと考える.本誌第57巻第 6 号の巻頭言でも述べたが,本学会での専門領域と会員職種の多様性が起因となって,普遍性の高い「魅力ある学会」の姿を求めることは至難の業である.しかし,多様化は現代社会の一つの特徴であり,多くの社会活動でさまざまな対応がなされている.その代表例はコンビニエンス・ストアであろう.多品種少量の品揃えで顧客の要求を満足させるとともに,常に売れ筋商品をチェックし,それを前面に出しながら他の商品の販売促進を図る工夫をしていることは周知のとおりである.この手法が学術大会運営に直結するとは思わないが,会員に研究発表の場を提供するという必須条件を満たしながら,他の講演などの企画にコンビニエンス・ストア的手法を取り入れる方法もあると考える.例えば,モーニングフレッシャーズセミナーやランチョンフレッシャーズセミナーの企画に工夫を凝らすことにより,若手会員や学生会員に「魅力ある学会」を感じてもらえるようにする手立てもあると考える.さらに,この成果が学会の基盤を作り上げる若手会員や学生会員の増加につながることを望みたい. (理事,企画委員長) |