JSRT 巻頭言 | Jpn. J. Radiol. Technol. 2004; 60(2) |
学会の財務状況と環境問題
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田中龍蔵 |
2003年の秋,私は生涯かつてない光景を目の当たりにしました.11月の初め,紅葉がその美しさを誇ることなく落葉してしまったのです.私は京都の西北で紅葉の名所に生まれました.幼少の頃,周りを取り巻く自然は私の脳裏に焼きつき,春は雪解けから草花の芽吹き,夏には小川のせせらぎに飛び交うホタル,秋は錦織成す紅葉,冬は深々と積もる雪に自然のすばらしさを肌で感じ取ることができました.さて,私の生まれた頃から約半世紀経ちましたが当時の自然を感じ取ることができるでしょうか.周囲の自然環境は著しく変化し,元に戻すことすらできない状況になったことは残念でなりません.日本人は古来より自然の中に神が宿ると信じ,大木,大岩,滝など自然を尊ぶ民族であったと思われます.しかし,いつのまにかこの純粋な気持ちを忘れかけているのかもしれません.われわれの世代は豊かな自然環境を次世代に引き継ぐ橋のような役割を持っているのではないでしょうか. さて,学会の方に目を向けてみましょう.私は本年度より学会の財務を担当し,年度当初より悪戦苦闘しております.前述の自然破壊とは直接関係ありませんが,会員数の減少問題が生じております.1993年をピークに会員数の減少が持続し,2003年当初ではピーク時の約90%になっております.本学会の財源はその約85%が正会員の年度会費で占められており,会員の減少による会費収入の減少が直接会務運営に影響すると言っても過言ではありません.また,1997年に制定された学生会員制度も正会員移行率35%と順調に推移しているとはいえません.年間約2200人の診療放射線技師が生まれているにもかかわらず新入会員の数字は低いものとなっています.会費収入は1996年がピークで約 2 億8139万円,2002年は 2 億5721万円ですから約2418万円の減収になっております.1996年の会費収入を2003年まで減少することなく,そのまま維持したとすれば 7 年間で通算約 1 億円の増収が算出できます.このように学会財務を支えるには会員数を増やすことが最も効果的でありますので,一人でも多くの方に学会への加入をお願いする次第であります. 前述の会員数の減少とは逆に春季,秋季の学術大会への発表演題数は順調に推移し増加しております.1993年春季総会時の演題数501題と秋季学術大会時の演題数198題に対して,2003年春季総会時演題数624題と秋季学術大会時演題数315題になり,約35%増になっております.このように会員数は減少傾向にありますが,研究の熱意は数字の上で感じ取ることができます.また,本学会では一人でも多くの優秀な人材を育てるために研究奨励賞や,海外短期留学制度,国際研究集会派遣会員制度など多くの特典を備えており,学術活動を支援しておりますので会員増のご協力をお願い致します.(理事) |