JSRT 巻頭言 | Jpn. J. Radiol. Technol. 2005; 61(6) |
専門技師制度にみる技師の将来像
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土`井 司 |
学会誌本年 3 号に委員会報告として,平成15年 4 月から 2 年間にわたって検討してきた「スーパーテクノロジスト認定制度に関する検討報告書」が掲載されました.将来構想委員会報告によって提唱されたスーパーテクノロジスト制度でしたが,こんなにも世の中の流れに合致した委員会の設立はなかったと思います.今から思うと,あの時期に設立されていなければ世の中に取り残されてしまい,今のように日本放射線技術学会がその制度の主体に成りえなかったように思います.委員会に召集された当初は,「こんな制度って本当に現実になるのだろうか」と思っていました.しかし,放射線治療における照射事故が次々と明らかになり,国としても学会としても何らかの対策を取らなくてはならなくなり,装置の精度管理能力と質の向上を目的に放射線技師のレベルを見直すため,放射線治療専門技師認定機構が設立され,放射線治療関連 5 団体によって「放射線治療品質管理士」が生まれました.国立がんセンターの土屋先生からは,胸部CT検診制度のスクリーナとしての放射線技師の登用が唱えられ私も検討班に加えていただきました.核医学専門技師も 4 団体協調で認定制度化を進めています.MR分野では,臨床衛生検査技師会や日本画像医療システム工業会も加え,最も多職種が入り交じった日本磁気共鳴専門技術者認定機構として 3 月末に発足しました.どの分野においても,今や専門性は社会の必須になっています. ただし,それらの認定制度の求めるレベルはそれぞれの機構で異なっています.安全と品質を保証し,ある一定の技術レベルを有している者を認定していこうとしているのが,乳房撮影や放射線治療,胸部CTだといえます.これらは,社会のニーズが先行した感があるため,できるだけ受験者の多くを認定せざるをえない状況にあります.一方,核医学やMRでは,ころばぬ先の安全管理ならびに装置精度管理体制を整え,より高度な知識と技術能力の達成を目標にかかげているため,少人数であっても教育・指導能力に秀でたスペシャリストを認定することを考えています.このように分野によって専門技師のレベルに差はありますが,医療にその技術を標準的に提供することが,医療スタッフが社会から信頼を得るための手段として大いに役立つと考えています. ところで,認定を受けようとしている皆様のなかには,「何ができれば技師?」「何をするのが技師?」「専門技師になったら何ができるの?」「何が変わるの?」と疑問に思われている方も多いと思います.前述の専門技師制度では,能力のレベルが業務内容を制限する可能性があります.同じ免許を持っていながら,認定基準以上の能力を有していないと医療の安全と質,ひいては国民の命にかかわってくると考えられているからです.診療放射線技師以上の社会上の責務が課せられたことを自覚していただく必要があります.後述の専門技師制度は,認定基準に学会発表や論文による成果を採用しています.これは,創造力と指導力を学術能力に加えて評価することで,日本のトップスペシャリストとして技術学の先鋒になってほしいとの願いを込めています. 専門技師とは,自分が提供する技術に責任を持つことだと思います.撮影一つを行うにしても,その原理・理論を知識として有していると同時に,なぜその撮影法と撮影技術を選択したかのエビデンスがなくてはなりません.さらに,実験的検証や新しい技術開発などによって社会に情報を提供するのが専門技師であると考えています.制度による成果は国が既成のものとして提供するものでもありませんし,機構が作るものでもありません.会員の皆様ひとりひとりが成果をあげることによって,私たちの成果が社会を動かすと考えています.医師の専門制度が認められるのに10年を要しました.今,私たちが社会に貢献しうる医療科学技術情報を提供し続けることが,きっと後輩に役立つであろうことを信じて活動するしかありません.どのようにすれば社会のためになるのか,医療のために何ができるのかを考えてみてください.ひとりひとりの活躍が大きな力となって,いずれきっと専門技師制度も放射線技術学も大きく社会に認められる成果をあげられるものと信じています.(理事,放射線撮影分科会長) |