最新号目次Vol.10-No.2, 2008(2008年5月発行号) Top Story CTの最新事情:MSCT / ADCT vs DSCT
64列MSCTの臨床応用の現状
心臓領域での臨床応用に躍進する64列MSCT 愛媛大学医学部 放射線科
はじめに
被験者の頭足(z軸)方向に多数の検出器をもつ,すなわち 1 回転で複数スライスの撮像が可能なマルチスライスCT(MSCT)は,その開発とともに臨床機の主力となり,z軸方向の検出器数は 4 列から64列へと増加してきた. 64列MSCTは日本では現在600台以上が導入されているといわれている.64列MSCTの特徴は「大量の鮮明な薄切りの画像」が「短時間」で撮像できる点にある.
256列ADCT開発のいまと放射線医学総合研究所での応用の現況
重粒子線治療の治療計画をさらに高精度化する256列ADCT 放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター病院 診断課
はじめに
毎年Chicagoで行われるRSNAの機器展示は,新機種を発表し,その可能性を占う場となっている.近頃盛んにいわれている面検出器CT(area-detector CT:ADCT)はヘリカル(スパイラル)スキャンからの脱却と等時相ボリュームデータの獲得を標榜しており,2007年11月末に行われたRSNA 2007での大きな話題は東芝メディカルシステムズの320列ADCT,Aquilion ONEであった.機器展示での注目はもちろん,RSNA / AAPM(American Association of Physicists in Medicine:米国医学物理学会)SymposiumでもCT Acquisition and Visualization: the State of the Artというタイトルで320列ADCTのことがトピックスとして紹介されていた.このシンポジウムのなかでErlangen-NÜrnberg大学のWilli A Kalenderは「1980年代にMRの出現により一時は“CT is dead”とまでいわれたCTがヘリカルCTやマルチスライスCT(MSCT)の登場で盛り返し,現在も発展を続けている」と述べていた.
dual energy CTの臨床的利点と今後期待される機能:DSCTを中心に
血流情報・骨除去・腫瘍の質的診断に威力を発揮するdual energy CT 名古屋市立大学大学院 共同研究教育センター(中央放射線部)
はじめに
RSNA 2005において,Siemens Medical Solutions社は64スライス(32列検出器 × 2)のDSCT(dual source CT:2 管球搭載型CT),SOMATOM Definitionを発表,発売を開始し,世界中の放射線診断医の注目を集めた.最近のCTの進歩は多列化を中心としており,2005年の時点で,パイオニアである東芝メディカルシステムズをはじめ,GE Healthcare社など各社より64スライスCTが発売されていた.さらに,128,256スライスへの発展が予想されるなか,DSCTは他方向からのアプローチとして,1 台のCT装置に 2 管球を搭載するという,これまで理論としては存在したが技術的に困難であったシステムを,画期的なStraton管球の開発を軸に現実のものとした. RSNA 2007 Booth Report
RSNA 2007 Technical ExhibitsにおけるCTの最新動向
面検出器,検出器素材,焦点偏向技術の開発にみる次世代CTの方向性 京都府立医科大学大学院医学研究科 放射線診断治療学
はじめに
2007年11月25〜30日に米国Illinois州Chicagoで開催されたRSNAは世界最大規模の放射線学会であり,併設されるTechnical Exhibitsは学会同様に世界最大規模の画像診断機器の展示発表会である.多くの画像診断機器の新製品がこのRSNAに合わせる形でプレスリリースされ,全世界に情報発信される.そのため,各社は新製品・新技術の粋をこのRSNAにフォーカスすることになる.この10年間は画像のデジタル化,CTおよびMRIの驚異的な開発状況,PETスキャナの臨床への応用など画像診断学および機器の進歩には目覚ましいものがあり,毎年Technical Exhibitsでの発表を心待ちにしている読者も多いことと思われる. Side Line RSNA 2007 DIGEST Perspective
電子化の波に対抗しうる放射線科の専門性を追求
Connecting Radiology─放射線領域の多様な要素を繋ぎ合わせた情報の宝庫,RSNA
第93回RSNA年次学術集会は,テーマに“Connecting Radiology”を掲げ,2007 年11月25〜30日,ChicagoのMcCormick Placeにて開催された.このテーマは,放射線科医間のグローバルな協調関係を育むと同時に,科学と科学技術,放射線領域における新しい創意工夫や患者ケアなど,放射線医学を構成するさまざまな要素を繋ぎ合わせることによって,無限大の情報の宝庫であり続けるという,RSNAの存在意義を明示するものである.その年のテーマに沿って開会直後に行われるPresident's AddressおよびOpening Sessionでは,放射線医学におけるデジタル化の歴史をひもとき,今や無限に近い膨大な電子情報をいかに活用していくか,また,商業化が進むなかで放射線科医としての専門性をどこに置くかというスタンスが示された.電子情報の活用を謳いながら,「技術革新に伴う商業化と放射線科の専門性のジレンマ」に警鐘を鳴らしたRSNA 2007を概括する.
What's New on RSNA 2007
変化に富むMultisession Courseで教育プログラムを拡充
臨床への適用の考察進む分子イメージング
RSNAの教育プログラムといえば,1,500演題近くと他の放射線学会に類を見ない多数のEducation Exhibitや300以上のコースを揃えたRefresher Courseで定評があるが,近年さらにこの教育プログラム重視の傾向を強めつつある.2006年の年次学術集会では,複数セッションで構成されていたRefresher CourseのAssociated Sciences,Case-based Review,Essentials of Radiologyの 3 コースと,infoRAD Exhibitに組み入れられていたDigital Mammography Training and Self-Assessment Workshopを統合し,新たにSeries Course,Radiologist Assistants Programを加えてMultisession Courseと名付け,プログラム全体の大きな枠として位置付けた.半日から数日と比較的長い時間を費やし,1 つのテーマについて基礎から臨床応用,最新の研究までを従来のRefresher Courseより深く,集中的に学習できるようにするというのがこのコースプログラムの目的で,設置 2 年目を迎える2007年はMolecular Imaging Symposium,Bolstering Oncoradiologic and Oncoradiotherapeutic Skills for Tomorrow (BOOST),Cardiac CT Mentored Case Review,Quality Improvement Symposiumの 4 コースが加わり,さらに充実した内容となった.分子イメージングの研究領域としての整備・発展,画像診断医と腫瘍放射線科医との協力体制の促進,多列化が進み発展著しいCTに必要とされる検査プロトコールや読影基準の確立,医療の質の向上という,この数年,President's AddressやOpening Sessionで目標として掲げられ,RSNAが現在注力しているテーマの実現が,今回追加されたこの新しい4 コースに求められる形となった.ここではこれらのコース内容について簡単に紹介する.
RSNA 2007 News Room
学会注目の口演のハイライトニュース
新しいMRI技術が受動喫煙による肺への影響を明らかにする / CTAの診断能力が高精度であることを多施設共同試験が明らかにした / PET-CTが手遅れになりがちなタイプの乳癌の診断に新たな希望をもたらす / 検死解剖におけるCTオートプシーの有用性 / 妊婦の放射線被曝はこの10年間で 2 倍に / 立体視デジタルマンモグラフィが乳房のイメージングを新たな次元に
Virginia大学とPhiladelphia小児病院の研究者らにより,受動喫煙によって肺組織への器質的障害が引き起こされることが初めて実証された.
「受動喫煙に長い間晒されることで肺組織の器質的障害が起こるのではないかという説は以前からあったが,肺組織の変化を分析するこれまでの方法ではその障害を見つけるのに検出感度が不十分であった」とPhiladelphia小児病院のChengbo Wangは述べた. 近年,受動喫煙は公衆の健康を脅かすものであることが明らかとなってきている.「受動喫煙」は米国環境保護庁(U.S. Environmental Protection Agency:EPA) によって発癌性物質に分類されており,心臓疾患,肺癌あるいは喘息や慢性気管支炎などの多くの慢性呼吸器疾患との関連性も指摘されている.特に小児は受動喫煙による有害な影響を受けやすい.米国肺協会(American Lung Association:ALA)によれば,米国の子供たちの35%は喫煙習慣のある家庭で育てられている. Cutting-edge Topic of RSNA 2007
NSFを巡る最新知見:診断から予防まで
Gd造影剤に続く関与因子は?
2006年のRSNAでは,Pittsburgh大学医療センターのEmanuel Kanalが重篤な腎臓病症例におけるガドリニウム(Gd)造影剤投与と腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibrosis:NSF)との関係性についてScientific Paper発表を行い,大いに注目された.その後,Gd造影剤使用に関しては,同年12月末にFDA(U.S. Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)より勧告が出されたのを皮切りに,2007年 3 月には日本医学放射線学会(Japan Radiological Society:JRS)・日本磁気共鳴医学会(Japanese Society for Magnetic Resonance in Medicine:JSMRM)の安全情報,7 月には欧州泌尿生殖器放射線学会(European Society of Urogenital Radiology:ESUR)のガイドライン等が相次いで発表された.RSNAではNSFが 2 年足らずの間に世界の放射線学会に与えた影響の大きさに鑑み,2007年はSpecial Focus Session,Plenary Session(Friday Imaging Symposium),Scientific Paperの 3 つの枠で,NSFまたはCT・MR造影剤の副作用について検討するプログラムを組んでいた.ここではそのなかから前出のKanalによるSpecial Focus Sessionの口演を中心にNSF関連演題の概要を紹介する.
Technology Forum 東芝メディカルシステムズ The Best Image 2007 特別講演
最新型320列ADCT開発の経緯と初期臨床経験
ADCTは頭部・心臓・小児領域で血管造影を置換する 藤田保健衛生大学医学部 放射線医学教室
面検出器CTの開発
面検出器CT(area-detector CT:ADCT)の源となるアイデア,たとえば検出器の多列化や複数線源化,面検出器とコーンビーム再構成法等の組合せといった考えは,1990年代初頭にはすでにわれわれの間で考えられていた.実際にADCT開発プロジェクトが動き出してから,320列Aquilion ONE 1 号機の設置に至るまで,10年という年月が必要であったが,結果として本プロジェクトが他に先んじて日の目を見た背景には,4 列マルチスライスCT(MSCT)開発当初よりADCTへの発展性が考慮されていたことが大きい. TOSHIBA Educational Symposium in Chicago, “The Realities of 256 CT”
急性期脳血管障害におけるADCTの臨床経験
検査時間短縮と低侵襲・低被曝・低コスト実現で急性期脳血管障害の検査が変わる Johns Hopkins University, Baltimore, Maryland, USA
はじめに
1932年にLisbon大学のEgas Monizが最初に脳動脈瘤を描出して以来,脳血管領域の血管造影には75年の歴史があり,Johns Hopkins大学でも現在多数の血管造影を施行している.血管造影は安全に施行できる場合がほとんどであるが,少なからず梗塞や穿刺部血腫などの合併症が存在することも確かであり,また,小児などで全身麻酔を併用しなければならない症例もある.よってこれまでわれわれは血管造影に代わる低侵襲検査を切望してきたが,今回,面検出器CT(area-detector CT:ADCT)の導入に伴い,この可能性が示唆されることとなった.ADCTがいったいどれほど凄いのか,これを言葉で説明することは難しく,実際に体験していただくよりほかはないと思われる.
幅広い領域に適用されるADCTの技術的特徴
シームレスな体部スキャン,パーフュージョン画像等,臨床に役立つ機能を満載 University Clinic Charité, Humboldt University, Berlin, Germany
はじめに
面検出器CT(area-detector CT:ADCT)がいよいよ現実のものとなり, Humboldt大学Charité病院に搬入されて始動に至った際の感動と興奮は計り知れないものであった.現在,ADCTは当施設において頭部領域の検査,全脳のパーフュージョン撮影,肺機能検査,心機能検査,胸痛のトリアージ検査,体部検査,新領域である体部のパーフュージョン撮影,全身の血管検査,骨軟部領域・小児分野の検査など,さまざまな臨床場面で使用されている.これらのうちいくつかはADCTとなったことで改善,あるいは初めて可能となった領域である.
心臓領域におけるAquilion ONEの意義
1 心拍 1 スキャンで時相のズレのない非侵襲的な血管プロファイリングを実現 Brigham and Women's Hospital, Boston, Massachusetts, USA
はじめに
320列の面検出器CT(area-detector CT:ADCT)であるAquilion ONEは,各臓器を「1 つのボリューム」としてカバーしたダイナミック撮影を施行することを可能とした.これは実に驚くべき躍進であった.対象物を 1 つのボリュームとして撮影した画像は,いくつかのサブボリュームに分けて撮影し後から合成する手法を用いて作成したこれまでのCTの画像とは全く異なるものだからである. Series 海外医療の現場から
Parkinson病の臨床的ニューロイメージングと最近の研究
fMRI,賦活PETを駆使したドパミン機能の画像化でParkinson病の病態を解明 McConnell Brain Imaging Centre,
はじめに
脳の機能局在図で知られるWilder G Penfieldによって1934年に設立されたMNIは,カナダのMontrealにあるMcGill大学の構内に位置しています.その一角,McConnell Brain Imaging Centreでは医学 / 認知科学 / 工学 / 統計学など多岐にわたる分野が融合した研究活動が行われています.本稿では,Parkinson病の臨床的ニューロイメージングのあらましに続けて,ここで行われている研究のいくつかを最近のニューロイメージング分野の話題を交えながら紹介したいと思います. ご購読のお申し込みについて●各号販売価格:2,100円(1冊、税込、送料別) ご注文は必要事項を明記の上お申し込みください.
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